激しい下痢や嘔吐などの症状を引き起こすノロウイルス。毎年冬場に流行する感染性胃腸炎の主な原因であるノロウイルスは感染力が強いのが特徴です。
特に保育園や幼稚園、小学校などで集団感染が起こりやすく、感染した子どもがおうちにウイルスを持ち帰り、あっという間に他の家族に拡がってしまうケースも珍しくありません。ご家庭内の感染を防ぐために、ノロウイルスの正しい予防と対策方法をご紹介します。
目次
ノロウイルスとは
ノロウイルスは毎年11~1月に流行する、感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。主にヒトの手指や食品などを介して感染し、おう吐、下痢、腹痛などの症状を引き起こします。
ノロウイルスの治療薬や予防のワクチンはなく、特に抵抗力の弱い子どもやお年寄りは吐いた物を喉に詰まらせたり、肺に入って肺炎を起こして死亡するケースもあるので注意が必要です。
またノロウイルスは感染力が非常に強く、感染者の吐物やふん便中に含まれる数百万~数億個のうち、わずか10~100個程度で感染すると言われています。このように非常に強力なウイルスとして知られ、少量でも感染能力があるばかりか、近年主流となっている新型ノロウイルスは、過去に一度ノロウイルスに感染していても免疫がつかず、何度でも感染する可能性があります。
ノロウイルスの症状
感染すると、1~2日で発症。吐き気、おう吐、下痢、腹痛などを引き起こし、発熱することはあっても、高熱になることはあまりありません。通常、これらの症状が1~2日続いた後、自然に回復しますが、高齢者や子供の場合は、1日に20回以上の下痢をおこし、脱水症状などで入院が必要となることがあります。
また、感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような症状の場合もあります。しかし、そんな人のふん便にも発症者と同じほどのウイルスが潜んでいるため、二次感染の予防対策に注意が必要です。
感染経路
ノロウイルスには、以下のような感染経路があります。正しい予防対策のためにも、感染の原因をきちんと把握しましょう。
ノロウイルスに汚染された食品
ノロウイルスに汚染されている二枚貝を生で食べたり、あるいは不十分な加熱調理によって食べた場合。または、ウイルスに汚染された井戸水や水道水を消毒不十分な状態で飲んだ場合。
このほかにも食品の製造に従事する人や飲食店での調理従事者、家庭で料理を行う人が感染しており、その人を介して汚染された食品を食べることでも感染します。
※ノロウイルスは熱に強いため40度ほどでは死滅しません。
ヒトからヒトへの直接的な感染
家庭や学校、職場などの人が大勢あつまる場所が危険です。それらの人の咳やくしゃみ、会話によって飛んだ唾やしぶきに含まれるウイルスを吸入することで直接感染します(飛沫感染)もちろん、皮膚や粘膜の直接的な接触でもうつることがあります。
ノロウイルス感染者からの間接的な感染
スイッチやドアノブなどの接触を介して手にウイルスを付着させることで感染します。また、感染した人の便や吐物を介しても同じことが言えます。
ノロウイルスの感染ルートで多いのは、「ヒトからヒト」。直接的、間接的な接触がもっとも感染しやすいと言えます。しかし、最近ではウイルスに汚染された食品を食べることで起きる感染事例が増えています。
調理担当者が大丈夫でも配膳担当者が感染していることで二次感染を起こす場合もあり、この多彩なルートがノロウイルスの猛威を防ぐのが難しいと言われる理由になっています。
感染を防ぐには
①手洗いをしっかり行いましょう
手洗いは手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。帰宅時や調理を行う前、食事前、トイレの後に、流水と石鹸による手洗いを行いましょう。また、手洗い場や水道が近くになく、すぐに手洗いが出来ない場合は消毒用エタノールを使って消毒を行いましょう。
②食品はしっかり加熱して!!
食事はなるべく火を通したものをいただきましょう。特に貝類(主に牡蠣、シジミ、アサリなどの二枚貝)はしっかり加熱した状態であれば感染しませんが、お年寄りや子供、大人であっても体調の悪い人が、生や不十分な加熱状態で食べると、感染するリスクが高まります。
二枚貝を食べるときは、中心部まで十分加熱調理(85~90℃で90秒以上)しましょう。抵抗力の弱い高齢者や赤ちゃんは避ける方が無難です。一般的にウイルスは熱に弱く、加熱によりウイルスは失活します。
③キッチンや調理器具の消毒
調理台や非金属製の調理器具は洗剤などを使用して十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(0.02%以上)で浸すように拭き取ります。ただし次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食(さび)させる性質があるので、包丁などの金属製調理器具や食器類はアルコールによる二度拭き、または、熱湯(85℃で1分以上)による加熱が有効です。
特に二枚貝を調理する場合は専用の調理器具を用いるか、使用のたびに、熱湯消毒するなどの対策を行いましょう。
④頻繁に手で触れるものを清潔に保つ
手や食器、調理器具類を清潔にすることはもちろん、ドアノブや手すり、トイレ、イスなど、家族皆で使用する共有箇所のウイルス除去も大切です。ドアノブや配管類、家具などの金属部に次亜塩素酸ナトリウムを用いて消毒すると、さびが生じ、使用した場所によっては元には戻せないこともあるので注意しましょう。
消毒後、十分に薬剤をふき取るか、もしくは臭いが少なく、プラスチックや金属に対する影響が少ないアルコールでの消毒がオススメです。
二次感染を防ぐポイント!
正しい汚物の処理方法
感染者のふん便や吐物を間違った方法で処理をすると、処理に携わった人に二次感染する恐れがあります。感染に十分に注意しながら、スピーディーかつ、確実に行いましょう。ふん便や吐物を処理をする場合は、部屋を十分に換気し、使い捨ての手袋やマスクをつけ、タオルやペーパータオルなどで吐物を除去します。その後、次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)やアルコールで消毒します。おむつや拭き取りに使用したタオルやペーパータオルは、ビニール袋に密閉し、漏れないようにして廃棄しましょう
ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、口に入って感染することがあるので、ふん便や吐物を乾燥させないうちに処理することが重要です!